幼稚園で白虎隊を踊らせていた話 (2021年11月)
妹の幼稚園のおゆうぎ会の演目が「白虎隊」だったことがあった。
装束に扇子を持った幼稚園児の集団演舞。浪曲風の白虎隊の歌に、突然妙にあかるい「宮さん宮さんお馬の前に ヒラヒラするのは何じやいな」「あれは朝敵征伐せよとの 錦の御旗じや知らないか」というトンヤレ節*の一節が挿入され、その後に絶望に満ちた「南鶴ヶ城を望めば 砲煙が颺る 痛哭涙を飮んで 且つ彷徨す」という詩吟**が入って、集団自決の場面に続く展開。
妹はインフルエンザでおゆうぎ会に参加できず、母親が家でそれらしい格好をさせて踊るのを撮ってやった写真が、たぶん今も妹の家に残っている。
福島県会津地方だったら幼稚園などで白虎隊を演じることはあるようだが、当時住んでいたのは東京近県だ。小学生だった私は、子どもが集団自殺するような踊りをなぜ演じるのか奇異に思った。いま考えても意味がわからない。
1937年に藤山一郎が『白虎隊』を歌ってたりするから、白虎隊のエピソードは戦時中には玉砕も辞さない機運を醸成するのに使われたと思われる。しかし会津戦争は、旧幕側が明治維新政府に抵抗した戊辰戦争の一環なので、白虎隊を扱うのは国に殉じることを推奨しているのか国に抵抗してるのか、不明なことになっている。
演舞の構成の悲劇性からみて、幼稚園の園長が会津の人だったのではないかなという気はしている。
2021/11/16記
〈解説〉断片的な記憶